初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
優しい腕に包まれしばらくすると、そっと身体を離された。

顔を上げるとお互いの視線が重なり、それから唇が触れ合う。

労わるような穏やかなキスを何度も繰り返す。胸の中が甘く切なくなった。こんな風に柊哉さんとキスをするのは初めてかもしれない。

夫婦になった夜交わしたキスよりずっと心が揺れて彼への愛しさが溢れて来る。

瞳を開くと、彼が私を見つめていた。目が合いどちからともなく微笑み合う。

「柊哉さん、好き……」

そんなこと言うつもりはなかったのに、自然に言葉が零れおちていた。

柊哉さんはほんの一瞬だけど目を瞠り動きを止める。だけど次の瞬間には私を強く抱きしめ、深く唇を重ねて来た。

息が苦しくて身体が熱くなっていくにつれ、彼との一体感が増していく。

途中柊哉さんの寝室に運ばれベッドに横たえられた。

覆いかぶさって来る彼の背中に手を回す。優しいだけではなく男の欲が宿る瞳に捉えられ心も体も疼いた。端正な顔立ちを少し乱れた前髪が陰を作っている。

ああこの人が私の夫なんだ。私……彼を好きになった、今恋をしているんだ。
今更のように実感すると切ないような言いようのない気持ちが襲って来た。

「柊哉さん……」

逞しい身体に縋りつく。

それから初夜とは比べものにならない程、濃密で親しい時間を私たちは過ごした。
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