【放浪恋愛】まりなの日記

【あんまりだわ!!】

5月27日・くもり

東京地検が○△興産の強制家宅捜査に入ったニュースが報じられてから1週間が経過した頃であった…

この日の明け方に、ニュース速報が飛び込んで来た…

問題の社長が東京地検に業務上横領など8件の容疑で逮捕されたニュースがテレビのテロップで伝えられていた…

問題の社長が逮捕されたけど、失われた貯蓄が返ってくるとは思ってへなんだので、あきらめることにした…

そうこうして行くうちに、やがてアタシにきついしわ寄せが来てもうたわ…

この日の夜、アタシは指宿温泉の高級旅館へコンパニオンの仕事に行って、いつものように福岡の貿易会社の社長さんのおしゃくの相手をしていた…

話は、いつものようにお部屋で過ごしていた時のことだったけど、社長さんがアタシにへらついた声で『あの時振りだした2000万円の小切手を返してくれるかなァ…』と言うて、両手を合わせて『たのむ…この通り…』とへらついた声でお願いしていた…

なんで?

なんで返してくれって言うて来るねん?

あの時、アタシが困ってはった時に振りだして下さった小切手を…

なんで返さなアカンねん…

アタシは、ますますわけが分からなくなっていた…

「2000万円を返して…それってどういうわけなん?」
「なあ、頼むよ…まりな、あの時振りだした2000万円の小切手を返してくれるかなァ…2000万円がないと、困るのはワシのほうなのだよ。なあ、頼むよまりな…この通りだ。」
「どうしてアタシがあんたに2000万返さなアカンねん?あの時、アタシが分譲マンションを購入した時に足が出てもうたから助けてほしいと言うたけん、あんたはそれを聞いてアタシに小切手を渡してくれたのでしょ?それなのに今ごろになって返せだなんて…そんなんあんまりやわ…」
「気持ちは分かるけれど、事情が変わったのだよ…」
「事情?事情って、どなな事情があると言うてはるのよ?」
「実は…先方さんにはらう買い掛け金が不足しているのだよ…それで、先方さんにお願いして待たせてもらっているけれど…支払いの期日が今月末になっているのだよぅ…2000万は、不足分にあたるカネなんだよ…その2000万がないと…裁判ざたになってしまうのだよぉ…なあ…頼むよ…まりな…この通り…ワシの願いをかなえてーな…」

アタシは、冷めた声で社長さんにこう言うた…

「社長さん…あんた…他に財産は…持ってへんのかしら…」
「持ってるよぉ…ニーサとイデコなどの金融商品があるよ…」
「せやったらそれ解約したらええねん…」
「解約したいよ…だけど…違約金払えと言われるのがイヤなんだよ…」
「ホンマかしら…ほんなら、こっとうひんを売却したらどないなん?」
「こっとうひんはあるけど…あれは、亡くなった女房の家の家宝なんだよ…女房のおじいさんの仏壇に座って、許しをもらわないと…」
「アホみたい…」
「まりな。」
「あんたね…アタシおもたんやけど…ホンマにあんたは会社を経営してはるのかしら…」

アタシは、冷めた声で社長さんにこう言うたあと、さらに冷めた声でこう言うた。

「あんた、もしかして…先方さんからキョウハクを受けてへんかしら?」
「キョウハクだと…」
「あんたのへらついたツラみたけん、アタシ…そないに思ったわ…」
「まりな。」
「とにかく、アタシはあんたの尻ぬぐいはでけんから…2000万は…あんた自身でどーにかしてよね…」

アタシは、社長さんに冷めた声で言うたあと、着替えをして部屋から出てゆこうとしていた…

せやけど、社長さんがつらそうな表情をしてはったけん、アタシは『2000万円を用意するから、待っててね。』と空返事をしたあと、部屋から出てゆきました。
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