幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
27章:出会いたくない過去

 今朝のかわいい妻を思い出して隠し撮りでも写真を撮ればよかったという大きな後悔を抱えていた健一郎だったが、大学に着くと気持ちを切り替え、すぐに朝イチの会議室に向かった。

 大学病院の医師は会議だ、学会だ、と診療以外にも多くのことに時間を割かれる。よっぽど『大学病院の医師』という格式ばった名称が好きな者か、大きな志がある者しか続けられない厳しい仕事だと思う。

 確実に自分には向いていない仕事だ。健一郎はいつもそんな風に思っていた。
診療ならある程度仕方ないが、学会や会議なんて正直出たくないし面倒だ。そんなこと、声を大にして言うことはないが……本当はいつだって三波のそばにいたいのだ。

 すると健一郎は森下と廊下で出会う。今日は、森下が本橋教授の代打で出席するといっていたな、とふと思い当たった。

 森下は一人暮らしをしていた三波の心の支えになってくれていた。性格もいいし、物事に対して真摯に見る目も持っていると思う。

 以前、森下が研修医をしていたときに、消化器か循環器で悩んでいたことがあった。その時、何気なく循環器を推した。本人の適正ももちろんあったが、本橋教授のところに森下先生がいれば、三波にとって安心だとも思ったのだ。

 ちょうどそのころ、一人暮らしにあこがれを抱いていた三波について、三波の父から相談を受けていた。本橋教授のところに頼んでみてはと助言をしたのも自分だ。
 そんなこと知れば、三波はとてつもなく怒りそうだが……まだ本人にそれは気づかれていない。

 対して森下はというと、三波がやってきたとき、なんとなく察したようで健一郎に声をかけてきたことがある。もう! そういうことですか! と言いながら、でも三波ちゃんと会えてよかったです、と森下は笑った。
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