きみはハリネズミ
身体中が心臓になったみたいだ、と思った。



体の前で祈るように握りしめた手が汗ばむ。



「…大丈夫」



誰に聞かせるでもなく、隣で低く呟いた茅ヶ崎くんの声も、どこか緊張を帯びていた。



看板衣装破壊騒動で変に注目度が上がった私たち3組は、その人気と宣伝力で、実泉高校の文化祭が始まって以来の売り上げを叩き出した。



文化祭準備なんか比じゃないくらいの忙しさで、厨房係に至っては疲労のあまり無表情で呪いクッキーを量産していたくらいだ。


加えて、茅ヶ崎くんの人気が開店からフル稼働。


もちろんシフトは決まっていたけれど、シフト外も写真撮影やなんやらで、結局茅ヶ崎くんは教室の前からほとんど動かずじまいだった。



“客寄せパンダ”にならないか不安だったけれど、ちょくちょく厨房にやってきては、つまみ食いをして満足そうに笑っていたのでそれなりに楽しめたみたいだ。
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