雨と霧と煙の異世界生活


―雅side―



…楓も可哀想になぁ…いくら当事者だし、私達の中で一番知識があるからって…刀向けられて責められて…ただ信じてもらおうとしただけなのにさ…。



そう思いながら、眠った楓の頭を撫でる。



…楓の右目は、もう二度と使い物にならないらしい。



目玉が抉れて…もう、見えないんだって。



本当は…冨岡さんに、当たり散らしたい気分なんだ。



あんたがもう少し早く来ていれば…楓はこんなことにならなかったのに…鬼殺隊が聞いて呆れる…そう、言ってやろうかと思った。



でも、そんなこと言ったってどうしようもないよね、だって楓は私を庇ったからこうなったんだから。



…責められるべきは私…なのに楓は、生きてるから良い…なんて…。



麗子「変わんないよね、楓。」



…麗ちゃんのその言葉が、何を示しているのかは私もよく知っていて。



楓が笑いしかしないのは…怯えてばかり居るのは……それ以外の感情がすっぽりと抜けてしまっているから。



…そうさせてしまったのは…紛れもない、私達。



雅「…謝って、許されるのかな。」



この言葉が、今回のことだけでなく…今までのことも含めて言ってるってこと、麗ちゃんならきっと気付いてる。



それでもそれが何かは敢えて言わず…私の頭を静かに撫でてくれる。



…本当は、この人達のこと…普通の人なら知らない範囲で、言うことくらいは出来る。



そもそも…鬼舞辻の名前さえ出せば、きっとそれで良かった。



でも私達はそれをせず…トリップしてきたことだけを告げて…あとの重荷全て、楓に背負わせた。



何かを言うことで、何かされるのが怖かったんだ。



斬られるのが、冷めた目で見られるのが、何故知っていると責められるのが…。



なのに楓は、それを気にせず…いや、多分心の中では相当怖かったはずなのに…迷わず、言った。



私達さえ知らない範囲のことを…普通そうに、いつもの笑顔で…。



雅「いつもいつも、背負わせてごめんね。…文句言わず、背負ってくれてありがとう。」



不器用で本音を言えない私が唯一本音を言えるのは、楓が寝ている時…寝顔に向かって。



…いずれこれを、本人に直接言うことが出来る日…訪れると良いな。



なんて、自分で意識しないとどうしようもないようなことを、胸に秘めて。



楓が早く目を覚ますことを祈って…手を握った。



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