無邪気な彼女の恋模様

「そんなこと言ったら、波多野さんだって私に隠し事してるじゃん!」

「してない。」

「してるもん!」

「何を?」

とぼける波多野さんに、私は叫ぶように言った。

「ちなみさんと会ってたんでしょ!」

ずっと私の頭の片隅でモヤモヤと住み続けている存在。
聞きたくても口に出すことがはばかられていた存在。
キッと睨むと、波多野さんは口ごもった。

ほら!
ほらほらほら!
木村さんの言ってたことは本当だったんだ。

「…そんなに忘れられないなら私出てくし。」

私に優しくしないで。
勘違いしちゃうじゃん。
波多野さんに愛されてるって。

傷が深くなる前に、自分から去った方がいい。
波多野さんにフラれる前に自分からフッてやるんだから。

「待てよ、なんで花緒が出ていくんだ。」

「だって波多野さんはちなみさんが忘れられないんでしょ!」

元カノの名前を言うだけで胸がズキリと痛む。
こんなに好きなのにこんなに暴言吐いて。
ああ、嫌われちゃうよ。
でも嫌われた方が好都合なのかもしれない。

「待てって、花緒。落ち着けよ。」

「うわーん!」

肩をガシッと掴まれるが、もう私は止まらない。
ずっと抑えていた感情をどうすることもできなくて、私は子供みたいに声を上げて泣いた。
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