クールな婚約者との恋愛攻防戦
「わ、私も、樹君と今以上に向き合いたい! 私のことも、もっとたくさん知ってほしいと思ってる!」

熱意を込めてそう伝えると、樹君は小さく笑いながら、「うん」と答えてくれる。

たまに見る樹君の笑顔は、たとえどんなに小さな笑みでも、目に焼き付いて離れない。


そして。


「私、今日は確かに、自分のことを知ってもらおうとはしてなかった。
私、本当はジェットコースターが好きなの。列に並んででも乗りたい」

自分のことを分かってもらう為にそう伝えると、樹君は。


「何となくだけど、そうだと思った。愛梨、ジェットコースター好きそうだし」

「えっ、そうかな?」

「うん。ちなみにジェットコースターは、俺も好き」

「ほんと⁉︎」


そうだったんだ。勝手に決め付けて、頼まれてもいないのに気を遣ってしまった。

最初から、もっと自分の気持ちをちゃんと伝えていれば良かったかも。


「じゃあ、あれ乗りに行こう! 猛スピードで九十度直下のやつ!」

「おお、凄そうだな」

ワクワクしながら立ち上がると、樹君からまたフッと笑われる。


いつも無表情な樹君が、こうして笑ってくれることが増えた気がして、本当に嬉しい。



だけど……。



「愛梨は本当にーー




まるで妹みたいで、放っておけないんだよな」




……ん?

妹みたい?
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