クールな婚約者との恋愛攻防戦
久し振りに会ったのに、もっと他に言うことないの?

そんな態度じゃ、絶対に帰ってなんかやらないーーと思ったのだけれど。


「まあ、来てくれて良かったわ樹君! さあさあ、このワガママ娘を連れて行ってください!」

と、母に強めの口調で言われてしまう。


「ちょっとお母さん⁉︎」

「ちゃんと話し合いなさいって言ったでしょ。それでどうしても駄目だったら、また帰ってくるのを許してあげるから」


……そんな風に言われたら、大人しく言う通りにするしかない気がした。


母に背中を押されながらリビングを出て、とぼとぼと玄関を後にする。
そして、門の前に停まっていた樹君の車に、癪だけど乗り込んだ。


向かう先は聞かなくても分かる。当然別荘だ。



「……私、納得なんてしてないから」

別荘までの道を安全運転で走っていく車の中で、樹君にそう告げる。

彼は、言い訳することも言い返してくることもなく、ただ「ああ」と答えるのみだった。
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