俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 どう、思っただろうか。急に頭を撫でられて警戒された? いや、普通は警戒するよね。初対面の相手にいきなり頭を撫でられたら。

 どうしたらいいのかと思い悩んでいると、男の子は照れくさそうに言った。

「ありがとう。……僕、もう大丈夫だよ。心配かけてごめんなさい」

「ううん、そんな……」

 気流の乱れも落ち着いたのか、シートベルトサインが消えた。席を立つ人もいる中、男の子はモジモジしながら聞いてきた。

「お姉さん、お名前は? 僕は圭太(けいた)っていうんだ」

「あ、えっと私は……瑠璃(るり)っていうの」

 危なかった。一瞬いつものクセで、名刺を出して自己紹介しそうになってしまった。
 同じように下の名前だけ名乗ると、圭太君は屈託ない笑顔を見せた。

「よろしくね、瑠璃ちゃん」

 る、瑠璃ちゃんだなんて呼ばれたの、いつぶりだろうか。ニューヨーク本社ではみんな、ファーストネームで呼び合っていたけれど、〝ちゃん付け〟で呼ばれたのは小学生以来かもしれない。

 久しぶりの〝瑠璃ちゃん〟呼びに感動していると、圭太君がニコニコ笑顔で話し始めた。

「瑠璃ちゃん、僕ね。ひとりで飛行機に乗ったんだ」

「どうしてひとりで乗ったの?」

 気になり尋ねると、圭太君はその理由を教えてくれた。
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