俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 今日も顔を合わすなり「大丈夫か?」と声をかけてくれて、いつも通りの私を見て心底安心した顔を見せた。

 だけどそこからは通常運転に戻り、こうしてからかってきたのだ。
 しかし私が淹れた珈琲を飲み、一息つくと表情は一変。神妙な面持ちで私を見た。

「それにしても本当にいいのか? 源のこと」

「……はい」

 今朝、出社すると源君は何事もなかったように「おはようございます」と挨拶してきた。こっちがびっくりするくらいに。

「どんなに源がシラを切ったとしても、俺がどうにかするぞ? ……瑠璃ちゃんはそれだけのことをされただろ?」

「でも証拠はなにひとつありません」

 昨日、家まで送り届けてもらった車内で事の経緯を説明した。冷静な私とは違い、副社長は声を荒らげて怒ってくれて、それだけで私はもう十分だった。

 それに噂を流したことも、私を脅そうとしたこともすべて証拠がない。これだけ噂が大きくなっているんだもの、訴えても信じてもらえない可能性のほうが高いもの。

「しかし彼の目的がなんなのか真相はわからないままですので、引き続き警戒はいたします」
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