ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

結局、その朝は、みんな二度寝したようだ。

私も例に漏れず、自室に戻るや否や、泥のように眠ってしまった。



本当はドラコのように汗も体液も……イザヤが私の中に放った精液も、まだ滲み出てる血も、お風呂で流したかったけれど、そんな余力は残っていなかった。





しかも眠っている間に、朝食の時間はとっくに過ぎ去り、お客様達も出発されたらしい。



いつまでも起きない私を起こしたのは、鳥の伊邪耶の必死の(さえず)り。



「……わかったわかった。起きる。すぐ出してやるから、待て。」

続いて、イザヤのいつもより低く、かすれてるのに艶っぽいイイ声……



って!!


「なんで!?え!?何で!?」



まどろみを吹き飛ばして、私はパチリと目を開いた。


至近距離に、イザヤの栗色の髪と澄んだ明るい青い瞳。



……び、びっくりした!

何で、一緒に寝てるの?

私の部屋の私のベッドなのに!




驚く私に、イザヤは苦笑した。


「何でって、……そなたと共に眠るのに、まだ、理由がいるのか?」

「え……。えーと……いや、まあ、えー……。」


……確かに、私は、名実共に側室になったわけだけど……ええと……じゃあ、もしかして、これからは、こんな風に、いつでも勝手にイザヤが部屋にもベッドにも入ってくるの?


うわぁ……。

プライベート、あらへんやん。




私の困惑を無視して、イザヤは微笑んだ。


「何やら、寝言を言っていたな。……シノブ?……友達の名のようだった。」

「あ。うん。友達。」


……めんどくさそうなので、至信(しのぶ)くんが男だということは敢えて言わなかった。



「……そうか。……次は、私の名を呼んでほしいものだな。」


イザヤはそう言って、ちょっと笑った。


「タカヨシではなく、私だぞ。」



……そんなこと言われても……無意識なのに……。



返答に窮している私の頬に、イザヤの手が伸びてきた。

「そんな顔をするな。……夜まで、待てなくなる……。」


きゅーん!と胸が疼き、甘美な震えが走った。


「……うわあああぁぁ。」

思わず、変な声を出してしまった。



イザヤは、ぷっと笑った。


「照れなくともよい。」

「……だって……」

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