ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「新緑が綺麗ね……。」
カピトーリでは、ヴィシュナの花はとっくに散っていた。
オーゼラのイザヤの館より、季節の巡りが早いようだ。
きらきらと輝く光のシャワーに、私は目を細めた。
イザヤは、それまで演奏していた手を止めて、しばし考えてから再びスクリプカを弾き始めた。
どう見てもヴァイオリンなそれは、いつもは甘いゆるやかな音を奏でるのだが……この曲は、何だかキラキラした音がはじけている。
軽やかで、明るいけれど、浮ついてはいない。
イザヤは当たり前のように、その場にぴったりの選曲をする。
どれだけ膨大な曲目を知ってるのだろう。
「素敵ね。音が木漏れ日のキラキラみたい。……何て曲?」
演奏をやめるのを待って、尋ねた。
「シベリウスの5番。春の訪れと、……国の独立を喜ぶ曲だそうだ。」
もはや滅亡きた国の騎士団長だったイザヤは、自分の言葉に傷つき、黙り込んだ。
……やれやれ。
慰めるのもめんどくさい。
てか、のど乾いた。
私は、サイドテーブルのレモン水に手を伸ばした。
慌ててイザヤが取ってくれた。
「よい。傷が癒えるまで、そなたは何もしなくてよいと、何度言えばおとなしくしてるのだ。」
そう言ってから、イザヤはレモン水の瓶を煽った。
そして、私の頬を捕らえ……そーっと口移しで飲ませてくれた。
……普通に、グラスでも、瓶からでも、自分の手で持って飲めるのに……そんなことすら、させたくないらしい。
確かに、未だに出血が止まらないし、治りが遅いのは認める。
でも、包帯もしてるし、痛みも最初ほどじゃないし……自分のことぐらいは自分でできるんだけどな。
行きがけの駄賃とばかりに、水を飲ませてくれた後そのまま続けられるディープキス。
毎度毎度、よく飽きないものだと感心するわ。
カピトーリでは、ヴィシュナの花はとっくに散っていた。
オーゼラのイザヤの館より、季節の巡りが早いようだ。
きらきらと輝く光のシャワーに、私は目を細めた。
イザヤは、それまで演奏していた手を止めて、しばし考えてから再びスクリプカを弾き始めた。
どう見てもヴァイオリンなそれは、いつもは甘いゆるやかな音を奏でるのだが……この曲は、何だかキラキラした音がはじけている。
軽やかで、明るいけれど、浮ついてはいない。
イザヤは当たり前のように、その場にぴったりの選曲をする。
どれだけ膨大な曲目を知ってるのだろう。
「素敵ね。音が木漏れ日のキラキラみたい。……何て曲?」
演奏をやめるのを待って、尋ねた。
「シベリウスの5番。春の訪れと、……国の独立を喜ぶ曲だそうだ。」
もはや滅亡きた国の騎士団長だったイザヤは、自分の言葉に傷つき、黙り込んだ。
……やれやれ。
慰めるのもめんどくさい。
てか、のど乾いた。
私は、サイドテーブルのレモン水に手を伸ばした。
慌ててイザヤが取ってくれた。
「よい。傷が癒えるまで、そなたは何もしなくてよいと、何度言えばおとなしくしてるのだ。」
そう言ってから、イザヤはレモン水の瓶を煽った。
そして、私の頬を捕らえ……そーっと口移しで飲ませてくれた。
……普通に、グラスでも、瓶からでも、自分の手で持って飲めるのに……そんなことすら、させたくないらしい。
確かに、未だに出血が止まらないし、治りが遅いのは認める。
でも、包帯もしてるし、痛みも最初ほどじゃないし……自分のことぐらいは自分でできるんだけどな。
行きがけの駄賃とばかりに、水を飲ませてくれた後そのまま続けられるディープキス。
毎度毎度、よく飽きないものだと感心するわ。