策士な課長と秘めてる彼女
「大丈夫ですか?顎を打ちましたよね?」

「大丈夫だ・・・。それより君は大丈夫か?」

「はい!私は石頭だから大丈夫です!」

グレーの塊だと思ったのは、その女の子がダサいリクルートスーツに身を包んでいたからだと気づいた。

「新人、か?」

「はい。今日からお世話になります。蒼井日葵です」

゛日葵゛

なんと、名前まで1文字違いとは、益々、毬ちゃんと日葵が他人とは思えない。

しかし、元気いっぱいの挨拶は好感が持てるが、会社にその髪型はないと思う。

「廊下は走るなと学校で習わなかったか?それに社会人としてその髪型はないと思うぞ」

陽生は個人的にはありだかな、という本音はひた隠して日葵に告げた。

「あ、これは寝坊して慌てて走ってきたから・・・。今から化粧室で整えるつもりで走っていたら、その・・・先輩にぶつかったんです」

「真島だ。営業部の主任」

「真島先輩、ですね。よろしくお願いします」

先輩という懐かしい青春ワードと、ニッコリ微笑む日葵の可愛さに胸がグッと熱くなる。

「挨拶より今は急がないと間に合わないんじゃないか?後10分で式が始まるぞ」

「そうでした!ありがとうございます。真島先輩」

ペコリと頭を下げて駆けていく日葵。

この日、陽生は初めて一目惚れという不可解な感情を体験することとなった。
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