大人の女に手を出さないで下さい
披露宴を兼ねた食事会は親類とごく親しい知人のみで集まり、知宏の店、オーベルジュヴィヴィアンで執り行われた。
少人数で知った顔のみということもあり梨香子も蒼士もリラックスして食事会を楽しんだ。
そこで梨香子の妊娠も発表され、さらにお祝いムードで盛り上がった。
梨香子の母は梨香子の年齢もあってか心配そうだったが蒼士がちゃんとサポートしますと力強く約束して安心してくれたようだ。

「ママ!無事婚姻届受理されたって!」

食事会には出席しなかった速水から英梨紗に連絡が入ったようで興奮気味に教えてくれた。

「そう、私、三雲梨香子になったのね」

感慨深げに梨香子は呟く。

「あたしは三雲英梨紗!でも、高校卒業するまでは苗字は変えないことにする」

急に苗字が変わると大変だからとそれは前もって話し合っていた。

「よろしくね?おとーさん!」

「ああ、やっと、名実ともに家族になれたな」

蒼士は梨香子と英梨紗の肩を抱き寄せ幸せに浸った。
すると両側から頬にチュッとキスが舞い降りた。

ヒューッと歓声が上がり盛り上がる。
ずるいぞ蒼士!と親父から嫉妬のヤジが飛んできたが無視をして二人をぎゅっと抱きしめた。

「3人で、いや、4人で幸せになろう」

嬉しそうに頷く梨香子と英梨紗。

蒼士は梨香子に一目惚れしてから今日までを走馬灯のように思い出してた。
ここまで来るまで短いようで長かった。

まったく、大人の女に手を出すようなものじゃないなと思う。
だけど簡単にはいかなかった恋路は最後に最高の幸せをもたらしてくれた。

歳なんて関係ない。
愛する人が傍に居るだけで幸せなんだと、蒼士は改めて思うのだった。



FIN

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