このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

“もう…!”、といったテンションで恥ずかしさを隠すように、とん、と俺の胸を叩く百合。そんな仕草も可愛らしい。

甘い幸福感に包まれながら彼女を見つめていると、百合は、はぁ、とため息をついてぽつり、と呟いた。


「…せっかくの捨て身の“作戦”だったのに…」

「“作戦”…?」


予想外のセリフに、きょとん、と目を丸くする。彼女の言葉の意味を図りかね、俺は黙って百合を見つめる。

するの、やがてちらり、とこちらを見上げた彼女は、視線を逸らしながら言葉を続けた。


「…寝ぼけているフリをすれば、律さんに甘えても許されるかなあって思って。」

「…!」


不意打ちだ。

早鐘のように音を立て始めた心臓に気付かれないよう、平静を装いながら彼女に尋ねる。


「…どうして“寝てるフリ”なんだ…?そんなことをしなくても、暖をとりたいなら普通に抱きついてくればいいだろ。」

「…“寒かったから”、じゃありません。」

「ん?」

「“律さんにくっつきたかった”だけなので…」

(…!)


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