このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


『百合ちゃん。私はね、ちゃんと貴方に幸せになって欲しいのよ。…これまでお金のことで色々我慢をさせてきたでしょう?今回のお見合いのお話は、今まで百合ちゃんが頑張って来たから舞い込んできたんだと思うわ。こんな“優良物件”ないわよ…!』


嬉しそうな祖母の声に、ツキ…!と胸が痛んだ。


ーー決して裕福とは言えない一般家庭だったのに、迷うことなく“うちにおいで”と抱きしめてくれた祖母。

ボロボロと泣いた私と弟を撫でてくれたあの温もりは、未来に希望を失った私にとって、唯一の心の支えだった。


“私がこのお見合いを受ければ、おばあちゃんにもいい暮らしをさせてあげられる”


全ての反論と負の感情を飲み込んで、私は電話を切った。

本音を言えば、結婚する相手は自分で選びたかった。ちゃんと好きになって、この人だけだと思える人と結ばれたかった。そもそも結婚とは愛し合う同士がするものだと思っていたし、私は、“政略結婚”などもフィクションの世界の話だと思っていた。

ーーだけど、これは私のためだけじゃない。

現在、二十歳の弟も、大学の学費を奨学金でまかなっている。それに加え、四つ掛け持ちしたバイトの収入も全て借金返済に充てる始末。

私が“恋愛結婚がいい”だの、しのごのワガママを言っている場合ではないのだ。

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