Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~

「───……!?」


 驚愕の目で俺を見上げる柚葉。──まさか、手首を掴まれるなんて思ってなかっただろう。


「…──何? 驚いた? 俺だってやられっぱなしじゃないよ。同じ道場で闘《や》ってきた仲じゃん」

「……な──」


「やっと半径0メートルになれた」


「……っ」


 不敵に笑うと、俺は眉をしかめる柚葉のリアクションなど物ともせず、その手をグイッと引いて──。


「ちょっと……、何すんの……!」

 そのまま、歩きだした。


「ちょっとも何も、ついて来てほしいトコあんだよね」

「は…!?」


 呆気にとられる柚葉をよそに、手を繋いでいるかのように手首を引っ張って歩いていく。


「悪モンの矜持ってヤツですよ」

「……は!?」

「お灸を据えてやろうと思って」

「…っ、は…!? 何それ──」


 口振りは呑気だけど、俺は少しも笑っていなかった。

 そんなただならぬ気配を察したのか、始めは「放して」だの「意味わかんない」だの喚いていた柚葉も──。


 やがて観念して、手を引かなくても黙ってついてくるようになった。




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