Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~

 ──あの一件以来……別に気まずくなったわけでもないし、挨拶程度の会話は交わしているものの、改めて面と向かってみると緊張してしまう。


 柚葉の中で、もう整理はついたのだろうか。

 柚葉の中で今、野波センセーという存在は──…。


「あの──さ…」

「はいっ!」


 改めて切り出す柚葉に、俺はギターを肩からだらんと掛けた間抜けな格好でかしこまる。

 すると柚葉は──。

「実は、渡したい物があって……」

 そう言って、バッグの中を探り始めた。

「へ?」

「はい、コレ。あげる」


 そうしてバッグの中から取り出され、間髪を入れず横柄に突き出された物は──。

 白いショッピング袋に入った、何やら小さな箱らしき物。


「…………」


 ──何だろう……。

 パッケージ的にはお菓子に近いような……。

 ちょっとドキドキする。


「……見ていい?」

「ど……どうぞ」


 心なしか、落ち着かない様子で「ドキドキしてます」ってのが顔色に顕れているようにも見える柚葉。

 俺は頭の中に『?』が飛び交ったまま、袋から箱を取り出してみる。


 と──。



「…………。え」



 箱に書いてある文字──つまりその品物を示す文字を見て、俺は硬直した。






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