Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~

「いつもあんがとねー。ゆずたんマジ天使。恩に着るわー」

「はいはい、だからゆずたんはやめてってば」

「じゃあ、ゆずぽん」

「挙句ポン酢にされたし」

 と、脱力する柚葉から上質なリングノートを受け取る。


「てか綺麗に使ってよ? それと昼休み終わったら必ず返して。じゃなきゃ正拳突きだから」

「怖っ! マジかよ、ヤメテー。反射的に上段受けの構えしそうになるから!」


 大げさに身構えると、柚葉の隣にいる友達の香苗《かなえ》ちゃんがケラケラ笑っていた。


「夫婦漫才みたーい」

 ……おお、香苗ちゃん、なんて嬉しいことを……!

「ちょっと香苗……こいつと夫婦とかマジやめて」

「ナイス香苗ちゃん、もっと言って。ゆずたんは俺の嫁。むしろ俺がゆずたんの嫁」

「矢井戸、いい加減殺意湧くから黙って」

「てへ」

 俺らのやり取りに、香苗ちゃんはもう一度「きゃはっ」と声を立てて笑った。

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