Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~

 ──軽く胸元をはだけさせては白い肩口を晒し(浴衣なら尚の事良し)、そっとお灸を添え、火を点す。

 じわりじわりと身体の奥底へと効能が浸透し、頬がほんのりと紅く染まる。

 立ち上る煙、芳醇なアロマ、得られる快感、微かに滲む汗──。

 そして「沁みる」と宣いたる唇、いと艶めかしく…──。


 ───……。

 ……案外イケるな……。って熟女A○かよ。

 つか何で最後古典風?



「あ、いやいや。つか、何でお灸──」


 あらぬ妄想をかき消して核心に触れると、柚葉はグッと声を詰まらせて──顔を赤らめては、ぽつりぽつりと語る。



「だって……。あたしのせいで、腰痛めちゃったみたいだし……ソレ、けっこう効くし。──それにこないだ……あんたにはいろいろとお世話になったから……。そのお礼っていうか……」


「───……」


 俺と目線を合わす事なく、恥ずかしそうに打ち明ける柚葉。

 つんけんしてるけど、その顔は心底恥じらってるようで──…。


「……ぶふっ」


 俺は力が抜けて、思わず噴き出してしまった。


「なっ……なによ、笑うことないじゃない! ソレお手軽パックだけど、けっこういいヤツで! お母さんに相談したらお灸初心者にはソレがいいって言うから、家からわざわざ……!」

「ははははっ!」


 尚も顔を赤らめて力説する柚葉に、笑いが止まらなかった。


 ああ、もう──……。

 なんちゅー顔するんだよ。

 なんちゅー事するんだよ。

 抱き締めて頭をよしよししたくなるじゃないか。


 触れられない髪を、強いのに華奢な肩を。

 全てを、この腕に包み込みたくなる衝動。


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