人生の続きを聖女として始めます
「…………落ち着いた?今日は朝から部活だよ?行ける?」

亜果利は心配そうに私を覗き込んだ。

「もちろん!何かに集中して嫌なことは忘れないとね!」

「よーしっ!じゃあ、先に食堂行ってるから!すぐに来なよ!」

「はいはい!おかーさん!」

「ぐっ!!それは、やめてっ!」

彼女は大袈裟に頭を抱え、私を肘で小突いた。
そして、安心させるようにふんわり笑うと、手を振りながら部屋を出た。

彼女のお陰で、私はかなり救われている。
こんなおかしい夢を見て奇声をあげるルームメイトなんて、本当なら嫌がられて当然なのに……。

その時、私はふと思った。
悪夢は小さい頃より確実に現実味を帯びてきている。
触れた感触や切ない思い、押し潰されそうな心に鼻をつく血の臭い……。
もしあの悪夢が、私の前世の出来事だったとしら?
非業の死を遂げた私は、それを忘れられずにまだここに……胸の中にいるのでは?
………いや、まさか、そんなことがあるはずないよね。
前世なんてバカげたこと、あるはずがない。

私はベットから起きて、支度を始めた。
今日は土曜日、食堂は少し遅めの8時から開いている。
亜果利が席を取ってくれているはずだから急がないと。
顔を洗い、部活のジャージを羽織り、長い髪を一つに束ね、いつものように簡単に身支度を済ませると私は部屋を走り出た。
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