人生の続きを聖女として始めます

先手

バロンスが国防大臣に就任して軍議に加わり、全てを知ったリブラも相談役として参加することになった。
賑やかになったエルナダ国執務室では、多角的な意見が交わされている。
優秀な頭脳が2つ増えたことで、バートラム逮捕に向けて勢いは加速しているように思えた。

「この近辺で、潜伏しやすい場所を書き出してみました」

ガブリエラが所々に円を書いた地図を机に広げた。
東に3ヶ所、西に2ヶ所、南に2ヶ所。
そして、北にも2ヶ所、神殿と別荘が円で囲まれていた。

「東は少し無理があるな。表門があり、人の往来が激しい。人に紛れて行動することも可能だが、怪しい動きはすぐにバレよう」

私の隣でバロンスが言った。

「南もだな。ここはレーヴェがいるから、警備が厳重だ。南門の外も国家の施設が立ち並び不審な者は入れない」

今度は南の円を指しながら、真正面に座るレグルスが言う。

「可能性があるのは、西の市民街と北の神殿と別荘……そんなところか?」

「あの神殿は全く使われておりませんからね。潜伏するにはちょうどいい」

ロシュとリブラも意見を出した。

「それにしても、この近くに本拠地を作って何をするつもりだろう」

ドレイクはバロンスを見て意見を求めた。
バートラムの性格やスタンフォードの歴史に詳しいというバロンスに聞きたかったのだと思う。

「あやつの考えることなど、ロクなことではないと思うが……ただ、思い当たるのは……ビクトリアのことだ」

「ビクトリア?」

「うむ。スタンフォード家は昔から結束が固い。それは、毒矢事件でもわかるだろう?家の為、主の為に命を捨てられる連中なのだ。そして、主の娘はここにいる。つまり救出も目的の一部なのではと考える」
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