人生の続きを聖女として始めます

雌伏

作戦立案から一週間、エルナダ王宮は、普段と変わらない警備体制を敷いていた。
少しの違和感がバートラムの猜疑心を呼び起こし逃亡を図るかもしれない。
それを阻止するためだ。
スタンフォードの動きに勘づいていない振りをして、普段通りに過ごす。
私にとって、それは思ったよりも幸せな日々だった。
朝は軍議、それが終わってからレーヴェの勉強を見て、レグルスも加わり家族で昼食をとる。
昼からは新しくなった弓の練習場で、またレーヴェと練習。
お茶の時間にはレグルスがやって来て、家族での団らん。
夕食は獅子王の部屋で取り、1日のたわいもないことを3人で語り合った。
もちろんその中にはエスコルピオもいて、ソーントンで紡がれるはずだった人生の続きを私は体験していた。

そんな小さな幸せが続くなか、その時は突然やって来た。
夕食を終えた獅子王の部屋に、ロシュとドレイクが飛び込んで来たのだ。

「来たぜ!!」

ロシュは鼻息も荒く叫んだ。
「来た」それはスタンフォードの連中だ。
そろそろだとは思っていた。
緩やかな日常を勿体無く思いつつ、私は身構えた。
大切なものをもう奪わせない。
レグルスが冷静に立ち上がり、両脇に腰かけたレーヴェと私もそれにならう。
そして互いに右手を出し、固くつなぎ合わせると誓った。

「オレ達は今度こそ幸せになる」

「うん、幸せになろう!」

「はい!絶対に!」

頷くと散会した。
レグルスはロシュ達と地下牢に、レーヴェはエスコルピオとリブラの待つ神殿部に。
私は、国務大臣室から駆けつけたガブリエラとある場所へ向かっていた。
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