人生の続きを聖女として始めます

後悔(獅子王)

聖女の去った大広間は、暫く水を打ったような静けさだった。

「さて、それでは祝宴もお開きですね!私も失礼させて頂きます」

ガブリエラは優雅に挨拶をすると、意気揚々と去っていき、聖女を拝みに来たとみえる貴族たちも、その後ろを付いて行った。

「まぁ、陛下の慰労の宴はこれからですのにね!では、私達だけで楽しみましょう!」

引っ付いて離れないビクトリアが鬱陶しくも猫なで声を出した。

「離れろ……終わりだ。自分の部屋に帰れ」

「は?え、陛下?」

「帰れ」

ビクトリアは驚いたような声を出したが、それでも離れない。
クソ……変な芝居などするんじゃなかった!
気分が悪い。

「あの……今夜は……私の部屋に?」

可愛く見せようと必死ですがり付くビクトリアを、オレは力ずくで引き剥がし言った。

「それは戯言だ。オレは忙しい」

「そんな!お待ちくだ……」

付き合ってられない。
さっさと歩き出したオレの後ろで、ドレイクが追いかけようとするビクトリアを物理的に排除した。
近衛の持つ槍を奪い取り、その刃先をむける。
ドレイクの表情は、親の仇を見る目と同じだ。
それに腰を抜かしたビクトリアは、自分の侍女と共に大広間から早々に姿を消した。

「……悪いな……」

早足で執務室に向かいながら、ドレイクに謝っておいた。

「全くですな。変な芝居をしなければこんなことにはなりますまいに……」
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