人生の続きを聖女として始めます
「……聖女様の名前……ジュリ様と言ったっけ?」

「はい。ジュリです」

「そっか……ふーん、いい名前だね。あ、ドレイクが手筋を変えてきた!くそ、きたねぇやつだな!」

「何を言う。手筋を読まれているのに、そのまま続行する馬鹿がいるものか!」

「女性を本気で負かそうなんて紳士のやることじゃないぞ?」

「紳士ならば、正々堂々手加減なしでやるべきだろう?」

ロシュとドレイクは、チェス盤の上でにらみ合いを始めた。
そんな彼らを尻目に、私はドレイクの指した手を分析する。
ドレイクの変えた手筋は、堅実な彼のわりには、冒険しているように見える。
これだけでは何ともわからないので、一つ動かしてみることにした。

「では、ナイトをここに……」

「……そうか、では、ルークを」

ドレイクは間髪入れずに次の手を指す。
私の手は読まれていた。
そして、彼の変えた手筋のパターンを分析出来ないまま、どんどん追い詰められてしまった。

「……これは、ダメですね……私の負けです」

目の前のドレイクに、キングを倒して見せ、私達の勝負はついた。
< 89 / 238 >

この作品をシェア

pagetop