溺愛アフロディーテ 地中海の風に抱かれて
 彼はどんな顔でこれを剥ぎ取るのだろうか。

 体を温めるためなのか、男のシャワーが長い。

 何だか急に嫌なことばかり思い浮かんできてしまって、ベッドに四つも並んでいる枕を顔に押しつけて音を遮断した。

『勝手なことばかりして失敗しちゃって』

『つまんない強がり言ってないで、やりなおせばいいじゃない』

『みんなと同じことをやってればよかったのにね』

『どうせ美咲は自分一人では何もできないんだから、言うとおりにすればいいのよ』

 やめてよ。

 私だって自分で決めて自分の人生を生きたっていいでしょう。

 馬鹿にされたって、失敗したって、それが自分で決めたことなら自分で責任を取れる。

 でも、人の言うとおりにしてその結果に満足できなかったら、怒りのやり場をどこにも持っていけなくて、自分の中にぽっかりと穴が開いていくだけなんだ。

 そうやって穴に向かって渦を巻いて私自身の心が沈んでいくだけなんだ。

 今までずっとそうやって『いい子、いい人』を演じてきたんじゃないの。

 それで私は幸せになれたの?

 その結果がこれでしょう。

 好きでもない男のベッドに潜り込んで、辱めにあうことを望むような女になっただけじゃない。

 私、ばかだ。

 後悔?

 してないよ。

 ……ミケーレ。

 どうして終わってしまったんだろう。

 泣いたらだめだ。

 きっと馬鹿な女だと笑われる。

 今さらそんなことを気にしても無駄か。

 あの男はどうせ一晩だけの遊びで私を捨てるつもりなんだから。

『あんたは幸せになる』

『俺がそうしてやるからだよ』

 ホント、ただの詐欺師じゃない……。

 シャワーの音はまだ続いている。

 あれが止まったとき……。

 私は詐欺師に抱かれるのだ。

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