アナタと、キスと、銃声と。
「お嬢…」
「何?」
「近いです」
「近くしてるの」
「離れてください」
「嫌だ」
翔平ちゃんとは10歳も離れてる。
やっぱりそんなに離れてたら恋愛対象としてみてくれないのかな。
10代のわたしなんて…まだまだ子どもだもんね。
翔平ちゃんと話をしていると、車で30分の通学路もすぐ時間が経ってしまう。
まだずっと話してたいのに。
正門の前で止まると、翔平ちゃんが降りる。
「お嬢、どうぞ」
わたし側のドアを開けて手を差し出す。
ドアを開けるのは、運転手の長谷川(ハセガワ)の仕事。
でも翔平ちゃんはわたしが小さい頃から一緒に車に乗ると毎回こうしてくれる。
この一瞬だけ。
この瞬間だけ、翔平ちゃんの大切な人になれた気分がする。
伸ばされた細くて長い指。
微笑む翔平ちゃん。
…ああ…かっこよすぎるよ。