アナタと、キスと、銃声と。
貫地谷亮(カンジヤリョウ)くん。
翔平ちゃんの部下の人。
わたしとも歳が近いから、仲がいい。
亮くんは、一瞬顔を歪めてから答えた。
「組長と、お出かけになりました」
「どこに?」
「対立している組といろいろありまして」
「……そう」
それだけ言うと、わたしは車へと乗り込んだ。
心臓が痛い。
翔平ちゃんが迎えにこない度。
わたしは不安に襲われる。
今日は帰ってくるのかな。
明日は?いつ帰ってくるの?
怪我は?してないかな。
…不安は絶えずやってくる。
家に着くと、組員もほとんど居なくなっていた。
残っている10名ほどの組員は、お父さんや翔平ちゃんがいない間に、報復としてやってきたりする人達からわたしを守るためにいる。
こういう日は、家の中もピリピリしていて、息苦しい。
自分の部屋に行き、ベッドに倒れ込む。
「…翔平ちゃん」
どうか、目が覚めたら翔平ちゃんが無事で…怪我なく帰ってきていますように。
心の中で何度も願って、目を閉じた。
でもこの日、わたしが夜中に目覚ましても誰も帰ってきていなかった。