番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
25話「笑顔のこれから」





   25話「笑顔のこれから」




 


 蛍は警察に逮捕された後は、全てを自供し麻薬組織についても詳しく話してくれたという。

 花霞が車で誘拐されそうになった男も蛍が金で買った男だという事がわかった。その男については、街にいた男に頼んだだけで正体もわからないようだった。

 サイバー課並みの実力だった蛍が組織からいなくなった事により、檜山や蛍がいた組織はほとんどが逮捕され、組織として機能しなくなったという事だった。

 蛍が花霞を誘拐し、そして住んでいた場所は事務所と呼ばれていた所で、普段は使われていなかったそうだ。蛍がそこにまた逃げ込み、配線をいじって他の階の事務所から電気など勝手に使い暮らしていたようだ。
 そこの調査も終わり、荷物はすべて蛍の元へと返されたようだ。
 
 花霞は何度か蛍に会いに行っていた。花の本や自分の作ったブーケの写真を手渡すと、彼はとても喜んでくれた。


 「花霞さんの旦那の後輩が時々俺に会いにくるんだ」
 「え?何で?」
 「なんか、サイバー課でわからないことがあると聞きにくるんだけど。自分に怪我を負わせた犯罪者に質問するって……本当に信じられないよね」
 「ははは。そんな事があるんだね」


 花霞と蛍の面会では、笑いがたえなかった。
 蛍はしばらくの間、遥斗が亡くなった時の記憶や自分がしてきた事でうなされたり、気分が沈んでしまう事も多かったようだ。それでも、少しずつ笑顔が見られるようになり花霞も安心していた。


 「ねぇ………花霞さん。」
 「うん?どうしたの?」
 「………ここから出る日が来たら、俺、遥斗さんの墓参りしたいんだ。………行っていいのかわからなくて、行ったことないんだ。………俺が行っても遥斗さんは怒らないかな?」


 蛍は心配そうな表情で花霞にそう言った。
 花霞は、ニッコリと微笑んで首を横に振った。


 「遥斗さん、喜んでくれると思うよ。一緒に会いに行こう。そして、しっかり報告しなきゃね」
 「ありがとう………。その時は花霞さんにブーケ作って貰いたいな」
 「一緒に作ろう。その方が遥斗さん喜ぶんじゃないかな?」
 「そっか……それはいい考えだね」


 彼が遥斗に会えるのはまだまだ先の話し。
 けれど、花霞も蛍もその日を今から心待ちしていたのだった。




< 143 / 152 >

この作品をシェア

pagetop