番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
14話「大切な人」





   14話「大切な人」



 「すみませんっ!俺、帰りますっっ!!」
 「おいっ、鑑っ」


 咄嗟に立ち上がり、すぐにでも彼女の元に向かおうとすると、滝川の手が椋の腕を掴んだ。


 「っ!離してくださいっ!」
 「落ち着いて行動するだ、鑑っ!」
 「俺は冷静ですよっ」
 「…………何かあったらすぐに連絡をしろ。先ほどおまえが言ったように少しでも違和感があったらでいい。おまえの勘や考えは、俺も信用している」
 「…………ありがとうございます」


 椋は我を失っていた事を恥て、滝川に小さな声で謝罪の意味を込めてそう言った。
 滝川が気づいてくれなければ、花霞は警察ではないから花霞は大丈夫だろうという意識があったので、もっと遅く気づく事になっていたはずだ。それなのに、滝川は椋の態度に怒ることもなく、助けると言ってくれている。
 やはり、この先輩は自分にとっては大きい存在だった。

 椋は滝川に小さく頭を下げた後、すぐに駆け出した。

 滝川はそんな椋を見送った後、すぐにスマホを取り出して電話をかけていた。その相手はもちろん夜中まで働いている仲間であり、サイバー課の人間だった。




 同じ頃。
 椋も、滝川と同じように電話をかけていた。走りながら、必死に「出てくれ………」と祈りながら電話をかけていた。
 虚しいコール音が続くだけで、花霞の明るい声は聞こえてこない。
 コール音が10回続いてから、椋は通話を切った。


 「…………花霞ちゃん………」


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