若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

「今は緊張して無理でもいつかね、聞いてごらん」

――いつか……。そうね、いつかそのうち。

優秀なお父さまでも、結婚に悩んだことがあったのだろうか？
御曹司や令嬢ばかりいる世界で、悔しい思いや嫌な目に合うことがあっただろうか。

夕翔の父のことは彼の口から聞いた話と、ネットの記事でしか知らない。
悠然と構えたオーラのある経営者。写真で見る限り、生まれながらに上流階級のような品格のある紳士だ。
目元が夕翔によく似ていた。社会的にどうあれ、きっと家庭では優しい人なのだろうと向葵は思う。

「それより、向葵のご両親にあやまらなくちゃ」

「大丈夫大丈夫。連れて行くって言った時、すごく喜んでいたから」

「結婚したとは言ってないんだよね？」
「うん。ごめんなさい。内緒にしてたのは私の責任なのに」
「なに言ってるの、あくまで僕の責任だ」