若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

――多分、あの日だわ。

佳織はそう確信した。


あれは半月くらい前のこと。

夫の矢神も佳織も、ちょうど同じように忙しくて、寝に帰るだけような毎日が二週間くらい続いていたある日のことだった。

疲れきってタクシーで帰り、マンションの前で大きくため息をついた。
それでもその日は八時にオフィスを出ることができたのだから良かったと自分を慰めて、伸びをした。

とにかく、ゆっくり休もう。
そう思いながらエントランスをくぐり、ふと目を留めた鏡。

そこにいたのは、疲れ切った顔の三十路女。
目の下の黒ずんだクマ。艶のないくすんだ肌。パサついた髪……。

唖然とするほどショックを受けて、思わず額に手をあてた。

『佳織』
その声に振り返ると、彼がいた。

彼もちょうど帰ってきたところだったらしい。
『いま帰りか。お疲れ』
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