愛さずにはいられない
「私たちは調理担当ね。大悟たちはテント火起こし班ね。」
「了解です。」
莉子がてきぱきと準備をしていく。大悟も手際よく火おこしをしていった。
奈央は莉子に指示されたものを切ったり洗ったりしている。
「奈央さんはずっと編集者になりたかったの?」
調理場で直人莉子は会話が盛り上がっていた。
「いえ。何をしたいか実はわからなくて、高校を卒業するときもなかなか進路を決められなかったんです。そんな時に自分の一番興味のあることをやってみたらいいんじゃないかって言ってくれる人がいて、美容専門学校に入ったんです。」
「そうなんだ。でも今ではあんなに編集者としててきぱき働けてるからすごいじゃない。この前の奈央ちゃんの特集記事、読んだわよ?」
「本当ですか?うれしいです。」
「奈央ちゃんに助言してくれたのって仁?」
莉子の質問に奈央は首を横に振る。
「仁の弟がいたんです。」
「亡くなった弟さん?」
「はい。」
「そう。奈央ちゃんのことよく考えてくれていたのね。そんな助言ができるなんて。」
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