愛さずにはいられない
『奈央。緊張してるか?』
『するに決まってるでしょ?』
高校の学園祭。
奈央と絃はステージの裏に立っていた。
ステージ上ではサッカー部の即席コピーバンドが曲を発表していて、ものすごく盛り上がっている。
次は奈央と絃の発表の番だった。
『やっぱりだめだよ。私には歌えない。』
このステージに上がることを決めたのは絃だった。
『俺は奈央にしか曲はかけないし、奈央の声に合わせた曲しか書けないって知ってるだろ?奈央が歌ってくれなかったら俺の曲は一生誰にも聞かれないんだ。だから、奈央が歌ってくれないと俺、困る。』
絃が珍しく甘えた表情で奈央に訴えてくる。
『奈央じゃないとダメなんだよ』
奈央はその言葉に自分の頬が赤くなっていないかを確かめたくなった。
そんなことを好きな人に言われたら照れる・・・でもうれしい。
『奈央。』
『なに?』
『俺がどうして奈央にしか曲が書けないか知ってるか?』
絃の言葉に奈央は首を横に振る。
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