愛さずにはいられない
仁は『愛さずにはいられない』の歌詞を絃が書きあげられていないことを知っていた。
完結する前の作品として、メロディラインだけはずいぶん前からかき上げていた。でも歌詞をつけることがどうしてもできなかったのは、その曲に含められない言葉や、奈央に気持ちを伝えるかどうかという絃の葛藤があったからだということも知っている。

「この曲の歌詞は絃がずっと仕上げることができなかったんだ。きっと奈央への気持ちをどう伝えたらいいかが分からなかったんだろうな。そのくらい載せきれない想いがあふれてたんだ。それに、奈央の将来の目標が決まるまでは自分の気持ちを言わないって言ってたからさ。奈央が専門学校に行くことを決めたからこそもう一度考え直してたんだと思う。」
仁が絃の気持ちを代弁するのは複雑な想いだった。
それでもちゃんと伝えてあげたい。奈央に・・・。

奈央はじっと仁を見つめた後再びそのメッセージを読み始めた。

< 224 / 297 >

この作品をシェア

pagetop