愛さずにはいられない
『おかえり』という絃の声が聞こえるような気がして奈央はそっと目を閉じた。

7年前。

ある日突然失った命。

その命を思い出すと奈央の心がどうしようもなく今でも痛みだす。
どうして痛みを逃せばいいのか、奈央にはわからない。



絃は仁の弟で、仁と絃の桐ケ谷家と蓮水家は家が隣同士で仁と絃の父と奈央の父が同じ会社に勤めていたこともあり奈央が生まれた時からの付き合いだった。

母たちも仲が良くて、忙しい父たちを置いて旅行へ行くことも多かった。

仁は奈央と絃よりも3歳年上で、奈央にとっては兄のような存在だった。
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