クローバー
「本当かわいい☆話すとのろけてしまうけれど、もう彼女しか考えられない感じ☆」
「子供は?」
「先月産まれた。それがもうかわいくてかわいくて☆」
「どっち?」
「男。」

(子連れの女だろ…?)

周りはこそこそする。
遥紀とナオトはにやり。
茉衣は、

(…遥紀に任せるわ。)

ある人は茉衣に遥紀ののろけが悪いと思い、

「サナは子供さんは?」
「茉莉は本当に娘らしくなったわ。天真爛漫だけどいいお姉さんしてる。毎日、かわいい☆と笑ってくれて、本当嬉しい。」
「お、お姉さん!?」
「下の子いるのよ。」
「え…。」
「いないとでも思った?」
「父親は!?」
「同じ人だよ。」
「え!?」
「私、結婚してるのよ。確かに成人式のころはしてなかったけど。」
「え…。」
「じゃないとこうして笑えないよね。三田君。」

にこっ。

「そうだね☆」
「パパになついている娘。弟を可愛がってしかたない娘がいて今がある。平淡な道ではなかったけれど幸せ。」


楽しんでいる。
場は遥紀と茉衣の事など気にならない。
遥紀は茉衣に合図する。

(そろそろ言おっか♪)
(はい)

くすくすくす。

遥紀と茉衣は笑う。

びくっ!?

周りはびっくり。

「気付かないんだ。誰も。」

遥紀は言う。

「へ?」
「すぐに気付くかと思ってた。な?」
「ね?」

遥紀と茉衣は見つめ合う。

「?」

周りはわからない。

「何でオレの左手の薬指の指輪。茉衣も同じのしてると思う?」
「え?」

遥紀と茉衣の左手の薬指には、クローバーの指輪がきらり。

「!?」

遥紀は茉衣をお姫様抱っこして、

「だって夫婦だから。ね。」

みんな混乱。

「え…子連れ…同じ父親…って。」
「オレの妻は茉衣だし、連れ子って実の娘に言うの?」
「…それは…。」
「…茉衣の言う通り平淡な道ではなかった。…何も知らずに、別れた苦痛を背負って、恋愛なんてできない体になって、茉衣に元気にしてると、だから幸せになって欲しいと、声だけでも聞かせたくて、仕事をしてても会える確信なんて無いのに、抜け殻になってた空白の11年の間…茉衣は、命が、生まれた娘が見た事ない父親を写していた。」
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