俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
緊張と恐怖に心臓が暴れる中、まずはリビングとアトリエの間に位置する部屋へ。
扉は開け放たれていて、紬花はフライパンをぎゅっと握ると慎重に覗き込む。
壁には大型プロジェクター。
どうやらシアタールームのようで、ゆったりとした作りのソファーとサイドテーブルの他には、泥棒が隠れられそうなスペースはなさそうだった。
ならば別の部屋かと移動を開始。
そろり、そろりとアトリエに入室して辺りを見回すが、特に気配は感じられず、広いウォークインクローゼットの中も生地やドレスが収納されているのみ。
勇気を出して並ぶドレスの後ろを確認したが、泥棒は確認できなかった。
その時だ。
突如、別の部屋からドライヤーの使用音が聞こえてきた。
(ポルターガイスト!? はっ! もしかして、泥棒がドライヤーを使っている!?)
泥棒がいいドライヤーだと動作を確認しているのかもしれない。
とにかく、どちらなのかを確認したら、警察かゴーストバスターズを呼ばなければと、紬花は鼻息荒くドライヤーの音がする扉の前に立った。
そして、ドアノブに手を伸ばした同時、ドライヤーの音が止まる。