こいつらといる数年より あいつといた一瞬が 輝いているのはなぜだろう
「なに、なんか悩みでもあんの?」
不意に目の前に立ちはだかるこいつは僕の心を見透かしているのか、ただの勘なのか。
「別に、大したことじゃない」
言える訳が無いだろう。
__お前が好きだ
 言ってしまったらお前の負担になる。僕はお前の足を引っ張りたくはない。
 それなのに、
「どんな些細なことでもちゃんと俺に言えよ。悩みなんて抱え込むものじゃないからな」
とか、
「俺とお前の仲に遠慮なんかいらねえよ」
なんでそういうことを言うんだ。こいつの温かい手が僕の頭を撫でた。
 優しいという言葉だけでは言い表せない。なんとも言えない感情が湧き出る。
「もっと惚れるだろ…」
口から零れた言葉はこいつには届かない。
「ん?なんか言ったか?」
お前は知らないままでいい。何も知らないまま、そのままで…
「なんも言ってねーよ」
「そーか?まあ、相談ならいつでもしろよ」
「はいはい。わかったよ」
あしらう様に会話を終わらせる。
こんな話をできるのはあと僅かだ。
 
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