基準値きみのキングダム



「ふふ」



くすくす笑った安曇さんは私のすぐ隣にまでやってきて、すとんと腰を下ろした。




「なんか、森下さんって、話しやすくなったよね」

「っ、えっ?」



「雰囲気が柔らかくなった? というか……。最初にここで話したときは、近寄りがたいオーラ出てたもん。冷たそうっていうか、正直言って仲良くなれなさそうっていうか」




ああ……、と納得する。

それは、いつも言われることだったから。



やっぱり私は、と思ったところで「でも」と安曇さんが言葉を続けた。





「最近、なんか、こうぐっとわかりやすくなった。────で、気づいたんだけど、森下さんってめちゃくちゃピュアでしょ」



「えっ? そう、かな」



「そう、今どき珍しいくらいだよ? もともとすごーく純粋な子なんだなってやっと気づいた。なかなか見抜けないくらい、あんた、鎧着込んでたんだから」





鎧、かぁ。



着込んでいた自覚はあるし、脱ぐのを諦めていた自覚もあった。

どうせ、わかってもらえないからって。





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