基準値きみのキングダム
(9): なりふりかまわぬオウジサマ


𓐍
𓈒



合わせる顔がなくて、逃げまどって帰宅して、それから夏休みが終わるまで深見くんとは1度も会わなかった。


あたりまえだよ、学校がなかったら、会う理由もきっかけもない。


もともと遠かった距離を再確認して、2学期が始まった。





「杏奈ちゃんさあ」




終礼が終わって教室をすばやく出ようとしたら、近衛くんに捕まった。

ぴたりと立ち止まると、近衛くんは首を傾げる。




「なんで、恭介のこと避けてんの?」

「っ、避けてない……」



「いや、バレバレだからね。休み時間になった途端、すぐどっか消えるし、放課後もさっさと帰るし、恭介と目も合わせようとしないし。最近、ってか、夏休み明けたくらいから変じゃない?」




図星で、うっと言葉に詰まる。





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