基準値きみのキングダム



「まさか、好きだって告られたくせに、恭介の気持ち疑ってんの? それ、本気で言ってんだ」




恭介も不憫だねー、と近衛くんはかすかに笑って、それから呆れたような目を私に向けた。




「あいつのことちゃんと見てれば、本気だってことくらいすぐ────……ああ、それか、敢えてスルーしてんのか」

「スルー、って」



「杏奈ちゃんは別に恭介のこと好きじゃないんだ。だから、告られて、面倒だから避けてんだ?」

「違っ」




考えるより先に、口をついて飛び出る。

近衛くんは、にやっと口角を上げて含み笑いを浮かべた。




「へー、違うんだ」

「……っ、それは」



「まー、何でもいいけど。ホンキの恋愛ってやつは、厄介そうで大変だね」




俺は見てるだけでいーわ、と近衛くんはいつも通りへらりと笑って「じゃあね」と私を解放した。





< 178 / 262 >

この作品をシェア

pagetop