基準値きみのキングダム
午前中はファッションショーの男子の部があって、深見くんは教室にいなかった。
ほんとうは私も体育館に見に行きたかったんだけど、あいにくクラスの当番で離れられなくて────ものすごい歓声と得票数でグランプリを獲得したって、はしゃぐ女の子たちの話し声がちらほら聞こえてきて、やっぱり見に行きたかった、惜しいことをしたなって思った。
そんなこんなで、今はもう午後。
だけど、せめて今日中、文化祭が終わるまでには、深見くんを捕まえたい。
今日は、私が捕まえるんだ。
いつも深見くんの方から近づいてきてくれたから、いざ自分が、って思うと、タイミングもきっかけも、これがなかなか難しいとわかった。
「……今、どこにいるのかな」
呟いて、何気なく廊下の時計を見上げて、ハッとする。
午後は女子の部のファッションショー、気づけば集合時間が迫っている。
急がなきゃ。
まずは、きちんと与えられた役割を果たして、話はそれからだ。
小走りに、体育館の更衣室へと向かった。