基準値きみのキングダム
「うまそー、それ森下の手作り?」
「一応そうだけど……あんまり見ないで」
「なんで?」
「だって……てきとうだし。残り物の詰め合わせとかだし」
人に見せられるような仕上がりじゃない。
節約弁当は冷蔵庫のあまりもののかき集めでできていて、彩りを考える余裕もなく、華やかさに欠けている。
だから、見ないで、ってちゃんと言ったのに。
「なあ、トレードしよ」
「はい?」
「最初はグー、じゃんけんぽーん」
突拍子もなく始まったじゃんけん。
深見くんの掛け声に合わせて、とっさにグーを出す。深見くんはパー。
負けた。
ていうか、これ、なに?
「勝ったから、これ、食っていい? 俺のおかずと1個、交換しよーよ」