基準値きみのキングダム
「恭介ってモテるんだよね。知ってるでしょ?」
「……うん」
こくり、ししおどしのように頷く。
「でも、あいつ、合コンとか行っても女に一切興味持たないんだよ」
それも、知っている。
深見くんが本命を作らない、誰とも付き合わないのは有名な話だもん。
「深見くんに告白した」「深見くんにふられた」というのはよく聞くけれど、深見くんが誰かに告白したり、告白を受けたりしたことはないんだって。
「ポテンシャルはあるのに、もったいないと思わない? あのレベルだったら女選び放題じゃん。俺があいつだったら、遠慮なく食い散らかすのになー」
ってのは冗談、と全然冗談に聞こえないトーンで付け加える。
それから近衛くんは、頬杖をついて私の目をじっと見つめた。
「だから、俺、驚いてんだよね。杏奈ちゃんの存在に」