売れ残りですが結婚してください
「大ばあちゃんが華族のお嬢様ね〜」

思い浮かぶのはずいぶん歳をとった写真で、父親から聞く話と写真の富子がリンクできないのだ。

忠明は話を続けた。恋人が戦死し、2人の叶えられなかった夢を次の世代に託すと……。

そしてその願いがようやく叶えられる時が来た。

そこまで話をした時点で唯と育はピンと来た。

「もしかして……翠が?」

忠明は頷いた。

「なんで今頃そんな話が出てくるの?父さんは前から知ってたんだよね」

あまりにも時代錯誤な話に唯は顔を歪めた。

「忘れてたんだよ。だって20年以上も前の話だぞ。あの時点では花嫁候補は唯、お前だったんだからな」

知らされた事実に唯が固まる。

「無理よ。だって私、輝之と結婚するんだよ」

「だから翠ちゃんなんだよね〜」

今まで黙って聞いていた育が口を開いた。

「相手はあの古川の御曹司。翠にそんな家に嫁がせるのがなんだか不憫で……」

玉の輿ラッキーって手放しで喜べない忠明に唯も複雑な表情を浮かべた。

「翠に押し付けてしまうようで申し訳ない」

本来、順番で言うのなら唯が嫁ぐはずだった。

それ故に唯まも忠明と同じような暗い表情になった
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