求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
飛沫を飛ばした傘に私を入るよう促し、彼はやや不満そうに眉を寄せた。

「その呼び名、いい加減やめない?」

もう少し近くに来て……。
彼はそう言いたげな眼差しで、私の背に手を回す。
いつだって、真摯に想いを伝えてくれる彼に、私はまだ何も返せてない。
だから、最高の笑顔で応える。

暁人(あきと)さん。愛してる」

まっすぐ見据えると、深みのある彼の瞳が大きく揺れる。
私の一挙一動で動揺する彼が、堪らなく愛おしい。
胸が幸せの熱で高まると、傘が斜めに傾き、彼が優しいキスをくれた。

「俺の方が愛してる……」

うっとりするほどの甘いキスの後、唇を触れ合わせながら言う。

「私だって負けない」

張り合うように言い合って、笑って。
傘を隠れ蓑にしながら、愛しさを注ぐようにキスを重ねていった。
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