マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「手をよく拭いて。水気があるとすぐに剥がれるから」

言われた通りに濡れた手をタオルでしっかり拭く。指先はまだ血が滲み出てくるからティッシュを一枚取ってそれでギュッと押さえる。

「ほら、貸して」

こちらに向けられている高柳さんの左手に、私は持っていたタオルを乗せた。

「違うだろ。指。絆創膏貼るから出しなさい」

「っ、…じ、自分で出来ますから」

「つべこべ言わない。ほら」

「~~~っ」

有無を言わせぬ彼の口調に、おずおずと指を出すと、彼はあっという間に私の指に絆創膏を巻いてしまった。

「………ありがとうございました………」

じわっと熱くなる頬を見られたくなくて、巻いてもらった絆創膏を見つめたままそう言うと、頭の上にポンと何かが乗った。

「どういたしまして」

乗せられた重みからじんわりと伝わる温もり。
それが彼の手なのだと気付いた瞬間、カッと顔に火がついたみたいに熱くなった。

「続きは俺が洗っておくから、青水は風呂に入ったらいい」

いつもだったら「今日の片付けは私の担当なので」と固辞するのだけど、真っ赤になった顔を隠す方法が見当たらず、私は「はい」と言いながら逃げるようにキッチンから退場した。




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