マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「妻に一からすべてを教えてやるのは、夫の役目だろ?」

「やくっ、……ええっ!?」

緩く微笑む高柳さんから見たことのない色香が漂っている。

「あ…あの……それはちょっと……」

じりっと体を後ろに引くも、椅子の背もたれと彼の腕によって阻まれる。
そんな焦る私とは反対に、高柳さんは相変わらずの鉄壁。

「そんなに怯えるな。青水の嫌がることはしない。俺のことが信用できないか?」

一瞬垣間見えた色香をスッとしまい、いつもの表情に戻った高柳さんが私に訊ねた。

高柳さんのことは信用している。それは一か月以上一緒に暮らしていれば分かることだ。表情には出ないけれど彼は優しいし、私のことをいつも気遣ってくれる。

私は左右に首を振った。

「そうか――」

目元を少し緩めた高柳さんが、嬉しそうなのが分かる。

「じゃあこれからも頼んだぞ、奥さん」

そう言って高柳さんは、人差し指で私の目元を軽く拭ってから離れて行った。




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