マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
ついさっき振られた上に叱られたばかりだというのに、私はどうしても自分の彼に対する気持ちを口にせずにはいられなかった。

『私、初めてなんです……誰かのことを好きになったの。今まで誰かを好きになったことも付き合ったこともなくて……。高柳さんが私の初恋です。だから勝手に初めては全部高柳さんとって………すみません…私の勝手な思い込みのせい不快な思いをさせてしまって……』

『不快、ってほどではないよ?』

そんなふうに優しくなだめてくれるから、私はまた調子に乗ってしまったのだと思う。

『さすがに一回でも…だなんて、本当に高柳さんに失礼でした。もう言いません』

『うん、分かってくれたらそれでいいんだ』

『でも私…もう誰かを好きになることはないかもしれません。だから……』

思い切って顔を上げる。
しっかりと彼の目をみつめ、私は思い切って言った。

『せめて、お願いです!ファーストキスだけでも貰ってください!!』

大きく目を見開いた彼の顔を瞼に焼き付け、私はギュッと双眸を閉じた。

いつのまにか空からふわりふわりと綿雪が舞い降りていた。
目を閉じている私の顔に落ちた雪が、熱で溶けて消える。

私はただひたすらじっと、瞼を閉じたまま上を向いて、唇に温かなものが降りるのを待っていた。




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